ブルゴーニュワインの世界で「白ワインの王様」と称されるモンラッシェ。その名は、単一の畑から生まれる稀少な白ワインとしてだけでなく、豊かな歴史と文化を持つ地域としても知られています。

白ワインの頂点に君臨し、卓越した品質と豊かな歴史を背景に、世界中のワイン愛好家を魅了する「モンラッシェ」なのです!
この記事ではそんな「モンラッシェ」の魅力や特徴、楽しみ方について詳しく解説します。
- 最高級白ワイン「モンラッシェ」とはどんなワインなのか知ることができる
- 「モンラッシェ」の中でのおすすめ生産者とワインがわかる
- 「モンラッシェ」にあう料理などの知識も深めることができる
モンラッシェとは


モンラッシェという言葉には、大きく2つの意味があります。
モンラッシェは、ブルゴーニュ地方コート・ド・ボーヌ地区に位置する約8.8ヘクタールの特級畑(グラン・クリュ)の名称であり、そこから生まれる白ワインの名前でもあります。



つまり、一般に使用される「モンラッシェ」という言葉には、大きく2つの意味があるんです!
地名としての「モンラッシェ」はピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村にまたがるエリアを指しています。
「モンラッシェ」という名前は、フランス語を直訳すると「裸の山」を意味し、日本語風に直すと「ハゲ山」のことです。これは、畑の上部が植生の少ない石灰岩質であることが由来となっています。
ちなみに、現在の村名が確立されるまでは、ピュリニーとシャサーニュという独立した村でした。しかし、モンラッシェの畑の名声が村名よりも高まるにつれ、両村は競うようにしてモンラッシェの名を村名に加えるようになったのです。
この出来事は、モンラッシェという名前がいかに価値のあるものとして世間に広まっていったかを象徴的に物語っています。
シャサーニュ・モンラッシェの影響
モンラッシェの品質と個性に大きな影響を与えているのが、シャサーニュ・モンラッシェ村の存在です。この村は、モンラッシェの南側に位置し、その特級畑の一部を形成しています。
シャサーニュ・モンラッシェの白ワインは、リッチでクリーミーな質感と、バターやトーストのような熟成香が特徴です。これにより、モンラッシェのワインにも複雑で奥深い風味が加わります。
また、シャサーニュの石灰質土壌は、ワインに鮮やかなミネラル感をもたらし、バランスの取れた味わいを実現しています。



ちなみに、シャサーニュ・モンラッシェは、白ワインだけでなく赤ワインの生産地としても知られています
モンラッシェの地理的特徴とテロワール


「テロワール(Terroir)」とは、ワインや農産物の品質と個性に影響を与える「土地の特性」を指すフランス語の概念のことです。
テロワールはワインの「個性」そのものであり、同じ品種のブドウでも異なる土地で栽培されると、全く異なる味わいのワインが生まれます。
例えば、モンラッシェとその周辺の特級畑(シュヴァリエ・モンラッシェやバタール・モンラッシェ)は、数百メートルしか離れていなくても、それぞれ異なるテロワールの影響を受け、風味や構造に明確な違いが現れます。
モンラッシェのテロワールの特徴
モンラッシェの畑は、標高255~270メートルの東向き斜面に位置し、夏季には豊富な日の光を受けることができます。



この地形の特徴と気候条件が、ブドウの成熟において、とても理想的な環境になっています
また、土壌は、硬質の石灰岩の上に薄い表土が広がり、赤みを帯びた泥灰土が特徴的です。この独特の土壌構成は、ワインに豊かなミネラル感と複雑な風味をもたらしています。
- 硬質石灰岩の基盤に薄い表土
- 特徴的な赤みを帯びた粘土質が層状に分布
- ミネラル分が豊富で、複雑な味わいの源
- 大陸性気候と地中海性気候の影響を受ける
- 昼夜の温度差が大きく、ブドウの熟成に理想的
- 適度な雨量と日照時間
- 標高:250m~270mの南東向き斜面
- ブドウ品種:シャルドネ100%
- 平均樹齢:40年以上
モンラッシェ周辺にある特級畑


モンラッシェの周りには、個性豊かな特級畑が並んでいます。
それぞれの畑の特徴を見ていきましょう。
シュヴァリエ・モンラッシェ
モンラッシェの上部に位置し、石が多い土壌から生まれるワインは、鋼のような強固なミネラル感とエレガントなフィネスが特徴です。
- 位置:モンラッシェの上部
- 特徴:繊細でミネラル豊富な味わい
- 標高:より高い位置にあり、エレガントさが特徴
バタール・モンラッシェ
モンラッシェの下部に広がり、粘土質の多い土壌から、重厚で豊かな果実味を持つワインが生まれます。
- 位置:モンラッシェの下部
- 特徴:力強く豊かな味わい
- 土壌:粘土質が多く、凝縮感のある味わいの源
ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ
生産者が少なく、年間生産量が限られる希少な畑です。精妙で緻密な味わいと優れた気品を持ち、柔らかさとしなやかさが特徴です。
- 位置:東側
- 特徴:バランスの取れた味わい
- 土壌:石灰岩と粘土のバランスが特徴的
クリオ・バタール・モンラッシェ
モンラッシェ最小の特級畑で、日当たりの良い石灰質土壌から、複雑なアロマとエレガントな味わいのワインが生まれます。
- 位置:南東部
- 特徴:華やかで豊かな果実味
- 日照:充分な日照により完熟したブドウから醸造



これらの畑は、それぞれ独自の個性を持ち、モンラッシェ全体の多様性と魅力を高めています
ちなみにこれらの畑の名称には興味深い歴史が秘められています。
「バタール(婚外子)」「ビアンヴニュ(歓迎)」「クリオ(泣き声)」という名称は、それぞれ、中世の騎士と村娘の恋物語に由来するとされています。
これらの物語は、当時の社会背景や人々の生活を垣間見ることができる貴重な歴史的逸話となっています。
ワインとしてのモンラッシェの特徴


モンラッシェの白ワインは、シャルドネ100%で造られ、その品質と風味は他の追随を許しません。
外観
- 若いワイン:輝きのある黄金色。
- 熟成したワイン:深みを増した黄色。
グラスに注ぐと、高い粘性が美しい涙を形成します。
香り
- 第一アロマ:柑橘類や白い花、青リンゴのフレッシュな香り。
- 第二アロマ:バターやトースト、バニラのニュアンス。
- 第三アロマ:熟成に伴い、ドライフルーツやスパイス、はちみつの複雑な香りが現れます。
味わい
- アタック:リッチでクリーミーな口当たり。
- 中盤:緻密な酸味と芳醇な果実味が調和。
- 余韻:長く続く複雑な風味が特徴です。
これらの特徴が組み合わさり、モンラッシェの白ワインは「白ワインの王様」と称される所以となっています。
モンラッシェの代表的な生産者


モンラッシェの名声を支える生産者たちは、それぞれ独自の哲学と技術でワインを生み出しています。
※評価点数は、世界で最も影響力のあるワイン評価誌「Wine Advocate(ワイン・アドボケート)」によるものです。同誌は100点満点方式で評価を行い、95点以上は「傑出した」ワインとされています。
ドメーヌ・ルフレーヴ モンラッシェ
所有面積0.08ヘクタールと極めて小規模ながら、ミネラル感際立つ究極のエレガンスを追求しています。その品質の高さから、世界最高峰の評価を獲得しており、価格も極めて高価です。
- 所有面積:0.08ヘクタール(シャサーニュ側)
- 特徴:ミネラル感際立つ究極のエレガンス
- 生産量:極めて少量
- 評価:世界最高峰の評価を獲得






DRC モンラッシェ
「ロマネ・コンティ」を手がけるロマネ・コンティ社は、シャサーニュ側に0.34ヘクタールの畑を所有しています。
彼らが作る白ワインは、蓄積された技術によって実現される長期熟成により、さらに複雑な風味を纏います。2020年ヴィンテージは100点を獲得し、その品質の高さが証明されています。
- 所有面積:0.34ヘクタール(シャサーニュ側)
- 特徴:驚異的な熟成能力
- 評価:2020年ヴィンテージで100点


ドメーヌ・ラモネ モンラッシェ
伝統的な醸造方法を守り、モンラッシェの手本ともいえるスタイルを確立しています。
- 所有面積:0.26ヘクタール
- 特徴:モンラッシェの手本とされる造り
- 評価:安定した高評価を獲得




ドメーヌ・コント・ラフォン モンラッシェ
0.31ヘクタールの畑を所有し、濃厚で圧巻の味わいが特徴です。毎年のWine Advocateで95点以上の評価を受ける実力派生産者です。
- 所有面積:0.34ヘクタール(シャサーニュ側)
- 特徴:驚異的な熟成能力
- 評価:2020年ヴィンテージで100点




ブラン・ガニャール モンラッシェ
0.07ヘクタールの畑から、優しくミネラル感に富んだワインを生産しています。2013年ヴィンテージはWine Advocateで95点以上の評価を獲得しました。
- 所有面積:0.07ヘクタール
- 特徴:優しくミネラル感に富んだ味わい
- 評価:2013年に95点以上を獲得






モンラッシェの白ワインをより楽しむために


適切な保管を徹底する
モンラッシェは高価で希少なワインであるため、適切な保管が重要です。



最高の状態でモンラッシェを楽しむためには、適切な保管が欠かせません!
通常は12~14度の温度と70%前後の湿度を保ち、振動を避けて横置きにすることが推奨されています。
- 温度:12~14度を維持。
- 湿度:70%前後が理想的。
- 振動を避け、ワインを横向きに保管することでコルクの乾燥を防ぐ。
料理とのマリアージュを楽しむ
モンラッシェの洗練された風味は、以下の料理と最高のペアリングを楽しめます。
- 魚介料理:伊勢海老のポワレ、オマール海老のグリル。
- 肉料理:若鶏のクリーム煮、仔牛のブランケット。
- チーズ:熟成したコンテ、エポワス。
モンラッシェの真価を引き出す料理の代表格として、バターソースのかかった伊勢海老のポワレ が挙げられます。
また、オマール海老のグリルや、若鶏のクリーム煮、仔牛のブランケットなどの繊細な肉料理も絶好の組み合わせです。
食事の締めくくりには、熟成したコンテやエポワスなどのチーズと合わせることで、より深い味わいの体験が可能です。
特に、シャサーニュ・モンラッシェ由来の豊かなバター感とミネラル感は、クリーム系のソースやリッチな魚料理と絶妙にマッチします。



最適な料理と合わせることで、モンラッシェの複雑な風味が一層引き立ちます!
モンラッシェの白ワインについてのまとめ
モンラッシェは、単なる高級白ワインではなく、ブルゴーニュの歴史と文化を象徴する存在として世界中のワイン愛好家を魅了し続けています。
その卓越した品質、独自のテロワール、そして名門生産者たちによって生み出されるワインは、「白ワインの王様」として不動の地位を築いています。
特に、シャサーニュ・モンラッシェの影響を受けたモンラッシェのワインは、より深みと複雑さを増し、唯一無二の存在感を放ちます。
また、適切な温度管理と料理とのペアリングを意識することで、モンラッシェの持つ複雑な風味と極上の味わいを最大限に楽しむことができるでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、世界最高峰の白ワインの魅力を、ぜひ存分に味わってみてください。